ECOLAB INC.ECL

時価総額
$773.2億
PER
36.3倍
工業向けの水処理と清掃・衛生製品の最大手。CIPプロセス制御や抗菌製品、浄化ソリューションを展開。2024年8月に外科用事業を売却、2024年11月に水安全のデジタル監視企業を買収。約100カ国で事業展開。

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企業概況
110文字)
業績概況
テーマ
1項目)
ブランド
1項目)
ライバル企業
1社)
同業種の日本企業
2社)

事業内容

ECOLAB INC.は、工場や施設向けの洗浄・衛生・水処理に関する製品とサービスを世界的に提供しています。主力は工場や食品加工場向けの洗浄剤や消毒剤、プロセス薬剤、施設の自動洗浄システムやデジタルによるモニタリング・制御といった総合ソリューションです。

同社の主要顧客は食品・飲料メーカーや乳製品・畜産の事業者、製紙や石油精製などの大手産業、さらに病院や製薬企業、外食・宿泊などの商業施設です。販売は主に企業向けとフィールド営業による直接販売で、農場向けや一部地域では代理店を通すこともあり、製品販売と定期サービス契約の両方で収益を上げています。

同社の事業は大きく四つの報告セグメントに分かれています。産業向け(Water、Food & Beverage、Paper)は工業用水処理や食品加工向けの衛生・工程支援を担い、節水や省エネで顧客の運用効率向上を図っています。施設・専門向けは外食や宿泊など向けの清掃・衛生製品、医療・ライフサイエンス向けは医療現場や製薬向けの消毒・精製ソリューション(高付加価値の吸着材や気化過酸化水素による除染等)、害虫駆除事業は飲食店や食品加工場などへの検知・予防・駆除サービスを提供しています。

経営方針

同社は安定的なキャッシュ創出を基盤に長期成長を図っています。2024年の営業キャッシュフローは約28.1億ドルで前年から約4.0億ドル改善し、EBITDAは約37.9億ドル、純利益は約21.3億ドルとなりました。これらのキャッシュを用いて設備投資や成長投資を行う一方で、負債圧縮と株主還元を両立させる戦略を採っています。実際に総負債は2023年の約82.8億ドルから2024年に約75.6億ドルへ減少し、ネット債務/EBITDAは2.4倍から1.7倍へ改善しました。

同社は水処理、食品・飲料向けソリューション、ライフサイエンス、害虫防除といった重点分野に資源を集中し、差別化を図っています。たとえば水処理や製造現場向けには化学製剤と現場サービスを組み合わせた「アウトカム(成果)提供」により、顧客の水・エネルギー削減や食品安全改善を支援しており、ライフサイエンス領域ではPuroliteやBioquellなどの高付加価値製品で品質・コンプライアンス面のニーズに応えています。これらは現地担当のフィールド営業と技術支援を組み合わせた「製品+サービス」の提案を通じて差別化しています。

新市場開拓と事業ポートフォリオの最適化にも積極的です。2024年は北米を中心にデジタル監視ソリューションを持つBarclay Water Managementを約2.62億ドルで買収するなど、デジタル能力の強化を目的とした買収を実行しました。一方でグローバル外科向け事業は売却し約9.26億ドルの売却代金を受領、特別損益で約3.56億ドルの売却益を計上しており、非中核事業の選別で資本配分を最適化しています。株主還元では2024年に自社株買いを約9.87億ドル実施し、四半期配当も引き上げ(年間配当2.36ドル、通期で14%の増配)ています。

技術革新への取り組みも経営戦略の中心です。研究開発とデジタル投資に継続的に投資しており、2024年の設備投資は約9.95億ドルに上ります。サプライチェーン強化や業務効率化を狙ったERPシステムの段階的アップグレード、One Ecolabのような業務センター集約によるスケールメリット獲得、現場センサーや自動化・監視技術の導入により顧客向けの予防保全や運用最適化を進めています。なお、AIや大規模システム導入には運用リスクもあり、同社は段階的な導入と統制の強化で慎重に進めています。